
たくさんの鋭い突起が並んだマットの上に寝る「シャクティマット(ShaktiMat)」。
最近ではSNSなどでも、
「寝る前に使うとリラックスする」
「よく眠れるようになった」
「首や肩が楽になる」
といった声を目にすることがあります。
見た目はかなり刺激的ですが、本当に科学的な研究は行われているのでしょうか。
実は、ShaktiMatそのものを使用した研究があります。
ただし結論からいうと、
身体にいくつかの生理的変化が起こることは確認されているものの、睡眠やストレスへの特別な効果が確立しているわけではありません。
今回は、実際の研究結果からシャクティマットについて見ていきます。
3週間シャクティマットを使うと睡眠やストレスはどうなる?
比較的新しい研究が、2024年に『Applied Psychology: Health and Well-Being』に掲載された、ドイツ・オスナブリュック大学とノルウェー科学技術大学の研究です。
研究には健康な若年者62人が参加。
参加者は、
シャクティマットを使ってリラックスするグループと、何も使わず同じように横になってリラックスするグループ
に分けられました。
両グループとも、夜の就寝前に20~30分、週3回、3週間実施しています。
その結果、
ストレスの低下
主観的な幸福感の改善
睡眠の質の改善
集中力の向上
が確認されました。
ここだけを見ると、
「やっぱりシャクティマットは睡眠やストレスにいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし非常に重要なのが、シャクティマットを使わなかったグループでも同じような改善が起きていたことです。
血圧、心拍数、痛みの閾値や耐性についても、シャクティマット群だけに特別な変化は確認されませんでした。
研究者らも、健康な若者の場合、シャクティマット自体というより、定期的に静かな環境でリラックスする時間をつくったことが影響した可能性を指摘しています。
なお、この研究ではShaktiMat社から研究用として60枚のマットが提供されていますが、研究者側への金銭的な補償などはなかったと論文に明記されています。
シャクティマットに寝ると自律神経や血流は変わる?
もうひとつ興味深いのが、2011年に発表された研究です。
この研究では健康な成人32人が、6,210個の突起を持つShakti-matに横になり、心拍数、血圧、心拍変動(HRV)、呼吸、唾液コルチゾールなどを測定しました。
マットに横になると、予想どおり最初は痛みが急激に高まりました。
しかし痛みは約30秒でピークに達し、その後徐々に低下。
身体が刺激に慣れていく「順応」のような反応がみられました。
生理的には、
心拍数の低下
高周波HRVの増加
背中の循環が増加したことを示す所見
などが確認されています。
一方で血圧はむしろ上昇しており、研究者らは、シャクティマット使用時には交感神経と副交感神経の両方の活動を示す反応が起きていたとしています。
つまり、
「シャクティマットに乗れば副交感神経が優位になって自律神経が整う」
と単純に説明するのは正確ではありません。
鋭い刺激による身体の反応と、その刺激に慣れていく過程が同時に起きている可能性があります。
また、ストレスホルモンとして知られる唾液コルチゾールには明確な差がありませんでした。
首・背中の「痛み」には効果がある?
シャクティマットのようなスパイクマットについては、痛みに関する研究も行われています。
2011年、スウェーデンのカールスタード大学などの研究チームが、首または背中に筋緊張による痛みを持つ36人を対象にランダム化比較試験を行いました。
マットを使うグループは、
1日15分 × 3週間
スパイクマットの上で休みました。
その結果、「最も強かった痛み」については低下が確認されました。
ところが、
通常感じている痛み、ストレス、不安、抑うつ、エネルギー、睡眠の質
には明確な差がありませんでした。
研究者ら自身も、
「痛みの改善がマットの刺激によるものなのか、プラセボなのか、単に休息したことによるものなのかは分からない」
と慎重に解釈しています。
つまり、痛みに対して何らかの可能性はありますが、
「首こりや肩こりに効くことが証明された」
とまでは言えません。
慢性的な腰痛を調べた91人の研究では?
2016年には、慢性または反復性の腰痛を持つ91人を対象とした研究も行われています。
参加者はスパイク状のニードル刺激マットを毎日2週間使用しました。
興味深いことに、マットを使用した直後には痛みが軽くなっていました。
しかし、2週間後や14週間後に評価した長期的な痛みそのものには、明確な改善がありませんでした。
一方で、腰痛による身体機能の障害やQOLの一部には改善が確認されています。
この研究には比較対象となる対照群がなく、参加者全員がマットを使用する「単群研究」だったため、
マットそのものによる効果なのかを断定することはできません。
また、安全性についても重要な結果があります。
8人は刺激が痛すぎて使用を継続できず、一時的な皮膚のかゆみや赤みも報告されました。
「痛いほど効く」と考えて無理に耐える必要はないということです。
結局、シャクティマットは「効果がある」の?
現在までの研究をまとめると、シャクティマットや同様のスパイクマットでは、
使用中に心拍やHRV、背中の循環などが変化する可能性があること
一部の研究では、一時的な痛みの軽減がみられていること
は確認されています。
一方、
睡眠の質やストレスを改善する効果については、シャクティマットだから起こる特別な効果とはまだ証明されていません。
2024年の研究で特に興味深いのは、マットを使った人だけではなく、ただ静かに20~30分横になった人にも、ストレスや睡眠の改善がみられたことです。
これは、シャクティマットが無意味という話ではありません。
人によっては、
「この刺激が心地いい」
「使うと身体を休めるスイッチになる」
と感じる可能性はあります。
ただ、その背景にはシャクティマットそのものだけではなく、
スマートフォンを置き、静かな場所で20分ほど横になり、何もしない時間をつくること
も関係しているのかもしれません。
忙しい毎日では、身体を休ませているつもりでも、SNSや仕事の連絡を見続け、頭は休めていないことがあります。
シャクティマットを使うかどうかにかかわらず、意識的に何もしない時間をつくることは、リラックスを考えるうえで大切な習慣のひとつといえそうです。
La HEADでも、完全個室の静かな空間で、頭だけではなく首や肩まで丁寧に施術しています。
何かをし続ける時間から少し離れて、
ただ目を閉じて、身体の力を抜く。
そんな時間を日常の中につくってみるのもいいかもしれません。


