
「アイマスク」といえば、光を遮って眠りやすい環境をつくるためのもの。
ところが最近は、ただ光を遮るだけではなく、目元にやさしい振動を与える“振動型アイマスク”も登場しています。
2026年、睡眠医学誌『Sleep and Biological Rhythms』に、こうした振動するアイマスクが実際の睡眠にどのような変化をもたらすのかを調べた研究が発表されました。
91人が自宅で6週間試した研究
研究を行ったのは、米国の睡眠研究機関SleepScore Labsの研究チームです。
対象となったのは、「寝つきにくい」「途中で目が覚める」など、軽い睡眠の悩みを持つ成人91人。平均年齢は45歳で、約69%が女性でした。
参加者は自宅で6週間、
・アイマスクを使わない期間:14日間
・振動するアイマスクを使う期間:14日間
・振動しないアイマスクを使う期間:14日間
という3つの条件を経験しました。
使用されたのはTherabodyの「SleepMask」。振動ありの期間では、就寝時に約15分間、徐々に弱くなる振動が与えられました。
睡眠は本人の感想だけではなく、睡眠ポリグラフとの妥当性が検証された非接触型デバイス「SleepScore Max」で客観的に測定されています。
睡眠時間は約12分、深い睡眠は約3分増加
振動しないアイマスクと比較した結果、振動するアイマスクを使用した夜では、
・ベッドにいた時間:約11.1分増加
・実際の睡眠時間:約11.9分増加
・深い睡眠:約3.1分増加
・浅い睡眠の割合:約1.8%減少
という変化が確認されました。
「たった12分?」と思うかもしれません。
確かに、劇的に睡眠時間が増えたわけではありません。
一方で、同じ人が振動あり・振動なしの両方を経験するクロスオーバー試験で、約2,851夜分の睡眠データを比較している点は興味深いところです。
なぜ“振動”で睡眠が変わるのか?
ここは、まだはっきりとした結論は出ていません。
今回の研究から分かるのは、「振動を加えたアイマスクを使ったときに、睡眠指標に小さな改善が見られた」というところまでです。
ただ、振動刺激と睡眠の関係については以前から研究されています。
2021年、ソウル大学などの研究チームが12人を対象に行った実験では、心拍に合わせた弱い振動刺激によって、深い睡眠中の脳波や自律神経に変化が見られ、記憶保持にも改善が確認されました。
もちろん、この研究で使われた振動方法と今回のアイマスクは別物です。
そのため、「振動すれば副交感神経が高まり、深く眠れる」などと単純に結論づけることはできません。
心地よい一定の刺激によってリラックスしやすくなることや、就寝前の刺激を減らすことなど、複数の要因が関係している可能性があります。
「振動」だけではなく“遮光”もポイント
今回使用されたSleepMaskは、振動だけでなく光をしっかり遮る構造になっています。
ただし研究では、「振動しないアイマスク」と比較しているため、今回確認された差は単に暗くなったからだけでは説明できません。
一方で、睡眠環境において光を減らすこと自体も重要です。
TherabodyのSleepMaskは、完全遮光と3種類の振動パターンを搭載した一般家庭用製品として、日本でも販売されています。なお、医療機器ではありません。
睡眠改善のためには、こうしたデバイスだけに頼るのではなく、
照明を落とす、スマートフォンを見る時間を減らす、室温を整えるなど、眠る前の環境づくりと組み合わせることが大切です。
「眠る直前まで活動する」から切り替える時間を
今回の研究で個人的に興味深いのは、振動そのものだけではなく、就寝前に15分間、光を遮って静かに過ごす時間がつくられていることです。
仕事やスマートフォン、SNSなどによって、私たちは寝る直前まで多くの情報に触れています。
いきなり「活動モード」から「睡眠」に切り替えるのではなく、
照明を暗くする
スマートフォンを置く
目を閉じる
静かに身体を休ませる
といった時間をつくることも、睡眠環境を整えるうえでは大切です。
振動アイマスクは、まだ研究が始まったばかりの新しい睡眠デバイスです。
今回の結果だけで「使えば睡眠の質が上がる」と断言することはできませんが、“眠る前のリラックスタイムをどうつくるか”という新しい選択肢のひとつとして、今後の研究にも注目したいところです。
La HEADでも、日中に張りつめた頭や首・肩をゆっくり休ませ、何もしない時間をつくることを大切にしています。
毎日の睡眠を見直す際は、「何時間眠るか」だけでなく、眠る前をどう過ごしているかにも目を向けてみてはいかがでしょうか。


