
寝る前に耳をじんわり温める「耳温活」
最近では、耳を温めるアイテムを見かける機会も増えています。
中でも小林製薬の「ナイトミン 耳ほぐタイム」は、2026年9月時点で累計販売数約400万個を突破。
2026年10月1日にはイヤーピースを一体型にしたリニューアル商品も発売され、改めて注目を集めています。製品は専用の発熱体によって、約40℃の温かさが約20分間続く設計です。
では、
「耳を温めると、本当に眠りやすくなるのでしょうか?」
今回は、「耳温活」と睡眠について、現在分かっている研究を見ていきます。
耳を約40℃で20分温めた研究がある
耳を温めたときに身体がどう変化するのかを調べた、小規模な研究があります。
2022年に小林製薬が発表した試験では、20~40代の健康な男女10人を対象に、耳介を約40℃で20分間温めました。
その結果、
・主観的なリラックス感が上昇
・手の甲の皮膚温が上昇
・唾液中のsIgA濃度が上昇
といった変化が報告されています。
sIgAは唾液などに含まれる免疫物質で、この研究では快適性に関連する指標のひとつとして測定されました。
つまり、耳への温熱刺激によって、本人が感じるリラックス感や身体の一部の温度に変化が起こる可能性は示されています。
ただし、この研究には大きな注意点があります。
対象者はわずか10人で、企業が行った試験です。
さらに、
実際に眠るまでの時間
睡眠時間
深い睡眠
夜中の覚醒
などを測定した研究ではありません。
そのため、
「耳を温めると睡眠が改善する」
と、この研究だけから結論づけることはできません。
「耳を温めると眠れる」はまだ立証されていない
「耳温活」と検索すると、
「自律神経が整う」
「副交感神経が優位になる」
「寝つきが良くなる」
といった説明を目にすることがあります。
しかし、現時点では、単純に耳を温めることで入眠時間や睡眠の質が改善すると示した、十分な規模と質の臨床研究は確認できていません。
海外を含めても、耳について研究されているのは、耳介へのツボ刺激や電気的な迷走神経刺激などが中心です。
これらは、
「耳に約40℃の温熱刺激を与える」
こととは別の方法なので、その研究結果をそのまま「耳温活」の根拠として使うことはできません。
現在の科学的な位置づけとしては、
耳を温めることでリラックスを感じる可能性はあるものの、睡眠改善まで確立されているわけではない
と考えるのが適切です。
ただし「身体の一部を温めること」と睡眠には研究がある
一方で、耳以外の場所への局所的な温熱刺激と睡眠については興味深い研究があります。
2020年、日本大学医学部などの研究チームが健康な成人18人を対象に、就寝前に目の周囲を温める実験を行いました。
温熱アイマスクと、実際には温まらない偽のアイマスクを比較したところ、
目元を温めた場合のほうが眠りにつくまでの時間が短くなり、睡眠前半のステージ2睡眠や脳波のデルタ活動も増加しました。
さらに、2019年の研究では、目の周囲を38~40℃程度まで温めると、手足の皮膚温が上昇しました。
身体の中心部の温度は変わっていないことから、局所的な温熱刺激によって、手足から熱を逃がす睡眠前の生理的変化に近い反応が起きた可能性が示されています。
これは、「温めれば身体の中心温度が上がって眠くなる」という単純な仕組みではありません。
むしろ、眠る前には手足の血流が増え、身体内部の熱を外へ逃がすことで深部体温が低下していきます。
この体温変化が、睡眠への移行に関係しています。
不眠のある人でも「目元を温める」研究では変化
2022年には、睡眠に悩みを持つ人22人と、不眠症と診断された16人を対象にした研究も行われています。
就寝前に目の周囲を温めたところ、偽のアイマスクと比べて脳波で測定した入眠までの時間が短縮しました。
さらに、手足からの放熱が大きいほど、入眠時間の短縮と強く関連していました。
また2024年には、睡眠に悩みを持つ女性64人を対象に、
就寝前の目元の温熱を4週間継続するランダム化比較試験
も行われています。
温熱群では、偽の温熱群よりも不眠症状を評価するスコアが改善し、主観的な入眠時間や「眠って回復した感覚」にも改善がみられました。
さらに、8人という非常に小規模な研究ではありますが、目元または首の後ろを約40℃で温めることで、主観的な睡眠状態や睡眠前半の脳波に変化がみられたという報告もあります。
つまり、
「局所的な温熱刺激と睡眠」そのものには、一定の研究蓄積がある
ということです。
ただし、これらはあくまで目元や首を温めた研究。
「耳にも同じことが起こる」と直接置き換えることはできません。
耳温活は「眠る前のリラックスタイム」と考えるのがよさそう
現時点の研究を整理すると、
耳を温めることでリラックス感や皮膚温に変化する可能性はある
一方で、
耳を温めるだけで寝つきや睡眠の質が改善するとまでは、まだ十分に証明されていない
というのが実際のところです。
「ナイトミン 耳ほぐタイム」についても、小林製薬は温熱だけでなく、イヤーピースによって周囲の雑音をやわらげることを製品特徴として挙げています。
そのため、
「耳を温めたから眠れる」
とひとつの作用だけで考えるより、
温かさを感じながら
周囲の音を減らし
スマートフォンから離れて
20分ほど静かに過ごす
という一連の時間が、就寝前のリラックスタイムになると考えた方が自然かもしれません。
睡眠研究でも、身体は電源のように突然「ONからOFF」に切り替わるわけではありません。
光や音、体温、ストレスなどさまざまな要素が変化しながら、徐々に眠る状態へ移っていきます。
寝る直前まで仕事やSNSを続けるのではなく、
「ここからは休む時間」
という習慣をつくる。
耳を温める「耳温活」も、そんな睡眠前のルーティンのひとつとして取り入れてみるのはよさそうです。
La HEADでも、完全個室の静かな空間で、頭・首・肩まで丁寧に施術しています。
忙しい毎日の中で、意識的に情報から離れ、身体と頭を休息へ切り替える時間をつくることを大切にしてみてください。


