
「同じカロリーで、たんぱく質や脂質、糖質の量も同じなら、身体への影響も同じ」と考えていませんか。
健康的な食生活を意識するうえで、カロリーや栄養成分を確認することは大切です。しかし、最新の研究では、栄養成分がほぼ同じ食品でも、加工の程度によって身体や脳の反応が異なる可能性が示されました。
2026年10月5日、国際学術誌『Nature Metabolism』に、超加工食品と加工度の低い食品を比較したランダム化比較研究が発表されました。
研究では、健康な成人57人を対象に、食後のインスリン分泌やエネルギー代謝、食べ物を見たときの脳活動などを分析しています。
今回は、この研究から明らかになった食品の加工度と健康の関係について解説します。
超加工食品とは?普通の加工食品との違い
超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)とは、工業的な製造工程を経てつくられ、家庭での調理では一般的に使用しない原材料や添加物などを含む食品のことです。
食品の加工度を分類する「NOVA分類」では、食品を加工の程度に応じて4つのグループに分けています。
超加工食品には、スナック菓子、菓子パン、一部のインスタント食品、清涼飲料水などが含まれます。
一方、野菜を冷凍したものや、単純な加工を施した食品などは、必ずしも超加工食品に分類されるわけではありません。
これまでの研究では、超加工食品の摂取量が多い人ほど、肥満や代謝異常、心血管疾患などのリスクが高い傾向にあることが報告されています。
ただし、その理由が食品に含まれる糖質や脂質、カロリーの違いによるものなのか、それとも加工そのものが関係しているのかは、十分に解明されていませんでした。
そこで今回の研究では、カロリーや主要な栄養成分をできるだけ同じ条件に揃え、食品の加工度による違いを検証しました。
カロリーも栄養成分も揃えた最新研究
2026年10月5日に発表された研究では、健康的な体重の成人57人が参加しました。
参加者の平均年齢は約26歳で、そのうち32人が食後の代謝反応を調べる試験に参加しています。
研究チームは、超加工食品と加工度の低い食品を使い、それぞれ約300kcalの食事を用意しました。
2種類の食事は、エネルギー量だけでなく、たんぱく質、脂質、糖質、食物繊維、食塩、水分量などがほぼ同じになるように調整されています。
さらに、血糖値の上がりやすさを示す指標についても、できる限り条件を揃えました。
参加者は別々の日に両方の食事を取り、食後約3時間にわたって血液検査やエネルギー代謝の測定を受けています。
これは、同じ人が異なる条件を経験する「クロスオーバー試験」と呼ばれる研究方法です。
こうした方法によって、個人差による影響を抑えながら、食品の加工度による違いを比較しています。
今回の研究の特徴は、栄養成分の違いを可能な限り取り除いた状態でも、身体の反応に差が生まれるのかを調べたことです。
超加工食品ではインスリン分泌とエネルギー代謝に違い
研究の結果、特に注目されたのが血糖値とインスリンの反応です。
食後の血糖値を時間全体で比較すると、2種類の食事に統計的に明確な差はありませんでした。
ところが、インスリンの分泌量には違いが認められました。
超加工食品を食べた場合、加工度の低い食品と比較して、食後のインスリン分泌が有意に増加していたのです。
特に食後40〜120分では、超加工食品を摂取した条件でインスリン濃度が高くなっていました。
インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込ませるなど、血糖値を調整する重要なホルモンです。
今回の結果は、血糖値の変化がほぼ同じでも、それを調整するための身体の反応が異なる可能性を示しています。
さらに、食後のエネルギー消費量や、糖質と脂質をエネルギーとして利用する割合にも違いが確認されました。
超加工食品では、食後のエネルギー消費反応が大きくなる一方、糖質をエネルギーとして利用する反応は相対的に小さくなっていました。
ただし、これらは短期的な代謝の変化であり、今回の結果だけでインスリン抵抗性や糖尿病の発症を判断することはできません。
それでも、カロリーや栄養成分がほぼ同じでも、身体が食品を処理する仕組みには違いが生じるという、興味深い結果が示されました。
食品の加工度によって脳の反応まで変わる?
今回の研究では、身体の代謝反応だけでなく、食べ物に対する脳の反応も調べています。
52人の参加者を対象に、機能的MRI(fMRI)という装置を使い、食べ物の写真を見たときの脳活動を測定しました。
参加者には、超加工食品と加工度の低い食品、それぞれ14種類ずつ、合計28種類の写真を提示しています。
さらに、それぞれの食品に対して、どの程度のお金を払いたいと思うかを評価してもらいました。
その結果、食品に対して支払いたい金額には、加工度による明確な差はありませんでした。
しかし、脳活動を詳しく調べると、食べ物の価値を評価する際の反応に違いが確認されました。
特に、食べ物の報酬価値などに関わる「線条体」や、視覚情報を処理する脳の領域で、加工度によって異なる活動パターンがみられました。
また、食後の糖質代謝にみられた個人差が、食べ物の写真に対する脳の反応とも関連していました。
これは、食品を摂取した後の身体の反応が、食べ物に対する脳の情報処理と関係している可能性を示しています。
私たちが食べ物を選ぶときには、味や香りだけでなく、過去にその食品を食べたときの身体の反応なども関係していると考えられています。
ただし、今回の研究で測定されたのは、写真を見たときの脳活動です。
超加工食品を食べると必ず食欲が増す、あるいは脳に悪影響が生じると証明されたわけではありません。
それでも、食品の加工度が、栄養成分だけでは説明できない脳の反応と関連していることは、注目すべき発見といえるでしょう。
健康的な食生活では何を意識すればいい?
今回の研究は、食品の健康への影響を考えるうえで、カロリーや栄養成分だけでは十分ではない可能性を示しました。
食品は、加工によって形状や構造が変化します。
例えば、食材を細かく粉砕したり、加熱や成形を繰り返したりすることで、消化のされ方や栄養素の利用され方が変わる可能性があります。
研究チームは、こうした食品の物理的な構造の違いが、身体の代謝反応や脳への情報伝達に関係している可能性を指摘しています。
ただし、今回の研究は比較的少人数の健康な若年成人を対象とした短期間の実験です。
また、栄養成分はほぼ同じでも、たんぱく質の由来や食品添加物などには違いがあり、加工度だけが結果を生み出したと断定することはできません。
そのため、今回の結果から、超加工食品を食べると必ず太る、病気になると結論づけることはできません。
また、加工食品がすべて健康に悪いという意味でもありません。
日常生活では、加工食品の便利さを活用しながら、野菜、果物、豆類、魚、全粒穀物など、加工度の低い食品もバランスよく取り入れることが大切です。
健康的な食生活を考えるうえでは、「何をどれだけ食べるか」だけでなく、「食品がどのように加工されているか」にも目を向けることが、新たな視点になるかもしれません。
カロリーや栄養成分の数字だけにとらわれず、食材そのものの特徴も意識しながら、毎日の食事を選んでいきたいですね。


