
ヒノキの香りを嗅ぐと、どこか落ち着く。
旅館のお風呂や森林を思い浮かべる方もいるかもしれません。
こうしたヒノキの香りについて、2026年には「睡眠そのもの」への影響を調べた研究が相次いで発表されました。
「ヒノキ=快眠」と断言できる段階ではありませんが、脳波や夜間の覚醒、起床時の感覚に興味深い変化が報告されています。
今回は、最新研究を中心にヒノキの香りと睡眠の関係を見ていきます。
2026年、九州大学が自宅での睡眠を研究
2026年9月、九州大学大学院農学研究院の清水邦義准教授らの研究チームが、香川県産ヒノキの根から抽出した精油と睡眠の関係を『Journal of Wood Science』に発表しました。
対象となったのは、35〜60歳の女性12人です。
参加者は自宅で、
・ヒノキ根精油を使う期間
・香りのない対照を使う期間
をそれぞれ2週間経験する「クロスオーバー試験」に参加しました。
睡眠は本人の感想だけではなく、脳波(EEG)、スマートウォッチ、睡眠質問票の3つの方法で評価されています。日常生活に近い自宅環境で調べた点も、この研究の特徴です。
中途覚醒や起床時の疲労感に変化
結果を見ると、ヒノキ根精油を使用した期間では、いくつか興味深い変化が確認されました。
使用7日目には、深い睡眠と関連するゆっくりした脳波である「デルタ波」の活動が増加。
さらに13日目には、スマートウォッチで測定した夜間の覚醒が減少し、主観的な評価でも、
・起床時の眠気
・疲労回復感
が改善しました。
つまり今回の研究では、ヒノキの香りを一度嗅いだ直後というより、1〜2週間繰り返して使用した際に睡眠に関連する変化がみられたことになります。
研究者らも、ヒノキ根精油が「寝つき」「睡眠の継続」「朝のすっきり感」をサポートする可能性があるとしています。
別の2026年研究でも「睡眠の質」が改善
同じ2026年8月には、別のヒノキ精油研究も発表されています。
こちらは65〜79歳の健康な男女33人を対象に、
・ヒノキ精油
・ヒノキにも含まれる香気成分「α-ピネン」
のどちらかを1日2回、4週間吸入してもらったランダム化試験です。
その結果、ヒノキ精油を使用したグループでは、気分に関する指標とともに、Athens Insomnia Scale(アテネ不眠尺度)で評価した睡眠状態にも改善がみられました。
ただし、この研究では「香りを使わないグループ」が設けられていません。
そのため、ヒノキ精油そのものによって改善したと断定することはできず、今後より大規模な比較試験が必要です。
なぜヒノキの香りで落ち着くの?
ヒノキ精油にはさまざまな香気成分が含まれています。
2026年の九州大学の研究で使用されたヒノキ根精油からは、
α-ピネン、δ-カジネン、γ-カジネン、リモネン
などが多く検出されました。
ヒノキの香りとリラックス反応については以前から研究があります。
2015年、千葉大学の研究では、若い女性13人にヒノキ葉精油の香りを90秒間嗅いでもらったところ、右前頭前野の活動が低下し、副交感神経活動が増加しました。また、本人の評価でも「心地よい」と感じる方向への変化がみられています。
さらに2025年には、香川県産ヒノキを使用した内装材から放出される香気成分についても、休憩中の副交感神経活動が高まる可能性が報告されています。
ただし、「リラックスした=必ず睡眠が良くなる」という意味ではありません。
香りによる心理的な心地よさや生理反応と、実際の夜間睡眠は分けて考える必要があります。
「ヒノキなら何でも眠れる」わけではない
今回の研究は非常に興味深い一方で、まだ注意すべき点があります。
九州大学の研究は12人という小規模なパイロット研究で、対象も35〜60歳の女性に限られています。
また使用されたのは、一般的なヒノキの木材や葉ではなく、香川県産ヒノキの“根”から抽出した精油です。
市販のヒノキ精油でも、産地や「葉・枝・木部・根」のどこから抽出したかによって香気成分は異なります。
そのため、
「ヒノキの香りなら何でも同じ睡眠効果がある」
「ヒノキを嗅げば不眠が治る」
と考えるのは適切ではありません。
それでも、2026年にはヒノキ精油を使った人の睡眠研究が複数発表され、さらに脳波や夜間覚醒といった客観的な指標にも変化が確認されたことは注目すべきポイントです。
睡眠を考えるときは、睡眠時間だけでなく、
照明、室温、音、香り、眠る前の過ごし方
など、寝室全体の環境を整えることも大切です。
La HEADでも、施術だけではなく、香りや照明、完全個室の静かな空間など、頭と身体がゆっくり休める環境づくりを大切にしています。
「いい香りだから何となく落ち着く」で終わっていたヒノキの香り。
その背景にある睡眠との関係が、少しずつ科学的にも見えてきているようです。


